2017/8/21, Mon.

踏切の警報と重なって、箒が地面を擦る音。 * 草の繁った一軒の庭、飛び回る蜻蛉のなかに囲まれた男。

2017/8/20, Sun.

雀。下草のなかから集団で飛び立ち、僅かに曲がった茶色い軌跡を描いて枝に映る。プログラムされたような動きの統率感。 * ネコジャラシの多く生えた草むらの上を行き来する蜻蛉。まだ少なく、疎らで、目につきにくく、色も視認されない。

2017/8/18, Fri.

空き地。繁茂した草の明るい緑の上を行き来する赤褐色の蜻蛉たち。

2017/8/16, Wed.

夜、瞑想。窓の外、増水した沢の水の響きが立ち籠めており、耳を奥へと誘う。蟋蟀の音が横から差し込まれている。じきに閉ざした瞼の裏に靄が湧き、眼球に纏わりつくよう。腕の感覚がなくなり、手の先だけ残して溶けたような、捻れたような感じ。

2017/8/15, Tue.

窓の外、蟬の音が網のように広がり、明滅するライトのように振動している。雨で増水したのだろう、川の音が低みから這い上ってくる。

2017/8/14, Mon.

散歩中、通りがかりの家のなかから、「核兵器」という単語が繰り返し発されるのを聞く。知識のない者に事情を教える雰囲気の声音。折しも終戦記念の前日、テレビの戦争特集を受けたものか。 * 小橋の上、雨で嵩の増した沢の響きの快感。虫の声がなかに混じ…

2017/8/12, Sat.

貯水池。元々苔のような緑に満たされた水に、岸の樹々が映りこんで別様の緑色が重なり、溶け合いながらも完全に混ざりきらずに調和する。

2017/8/4, Fri.

百日紅。足もとよりも、枝からほど近く、塀の上に濃いピンク色の花びらが溜まり、狭い面を埋めている。 * 夜の室、静けさ。蟬の短い声のみが遠く聞こえるが、カーテンをあいだに挟んで、気のせいとも実声ともつかないほどにかすかである。

2017/7/31, Mon.

混み合った電車内。扉際の男性、頬の一部がかすかに膨らんだり引っ込んだりする。魚の鰓を思わせる動き。 * 夜、駅前。すれ違った男性の口元に青い光の点。電子煙草というものか。

2017/7/30, Sun.

料理中、茄子を細く切る。きゅ、きゅ、という摩擦音とともに弾力のある肉の感触が、包丁を通して手指に伝わる。 * 暗い夜道に死にかけの蟬が臥せっているのに気づかず、突如として足もとから激しい羽音の立つのに心臓が跳ね上がり、思わず片足が避けるよう…

2017/7/29, Sat.

書き物の最中、背後から、高い音で空転するような芯のない虫の音が立っており、聞き慣れない声だと思ったところが、扇風機の回る響きだった。

2017/7/26, Wed.

歩廊。柵に白鶺鴒が降りて来る。何かを探すかのごとくきょろきょろという調子で左右に首を振り、突き出た尾も上下に撓めるようにして、柔軟に振りながら柵の上の狭い道を歩く。 * 駅、ベンチに座って脚を組んだ女性。下に置かれた太腿の側面、中央付近に、…

2017/7/19, Wed.

オレンジ色の指輪が落ちていると見たのが、百合の花弁の地に伏して丸まった姿だった。 * 高年の男が自転車に乗って過ぎる。白いシャツに濃紺のズボン。真っ赤な帽子が際立つ。シャツから露出した腕はオレンジの混ざったような褐色に焼けている。 * 暑いな…

2017/7/18, Tue.

マンション入口のガラスに、光に晒された背後の路面が反映。踏んで過ぎてきた白さに目が行く。抑えられた輝き。

2017/7/17, Mon.

猫、アパートの駐車場。立ち姿のこちらにやや怯えながらも、走らずのそのそと行って車の下に入る。 * 夜、木の間の下り坂に黒い影、猫である。右の木立のなかに入っていったのを、そのあたりまで来てから探せば、黒い体が闇のなかにほとんど溶けこんで見分…

2017/7/12, Wed.

ラベンダーに蜜蜂。風に押されて体の先端のみで花に掴まっているが(蜂の尻と花のあいだに僅かにひらいた空間)、振り落とされることなく耐え抜く。 * 風に乗って飛ばされる落葉のような雀。ほとんど意志のないかのような、受動的とも思える軽さで宙を走り…

2017/7/10, Mon.

電線の上に二匹の鳥、雀とも鵯とも付かない体躯。青空を背後に、明るさを受けて白っぽい。尻の方をふるふると揺らす。 * 草むらから自転車に乗った女児二人が出てくる。一人は早々と道を渡ったが、もう一人はこちらの前で、道路とのあいだに挟まった傾斜を…

2017/7/8, Sat.

黄昏れ、街道。早く早く、と急かす子供の声。叫び。過ぎざまに覗くと、花火をやっている。漂った煙の向こうに明かる小さな火と、その周囲に広がる緑色の光。

2017/7/4, Tue.

女子中学生、横断路前の段に腰掛けて、迎えでも待っているのか、道の先にじっと目を飛ばしている。膝の上に白い布の袋。編み物を抱く老婦人の佇まい。

2017/7/3, Mon.

歩廊から見下ろしたコンビニ前のベンチ、男が二人座った周りに(そのベンチにはいつも、素性のあまり確かでなさそうな人々が昼間から集まっている)、何か餌でも撒いたか、鳩が群れて取り囲んでいる。男の横にビールの缶。 * 正面から向かい合った鳩、膨ら…

2017/7/2, Sun.

坂道、ガードレールの向こう、下り斜面いっぱいに茂る夏草のなかに、オレンジ色の曲線的な花一つ。 * 窓枠に子犬が乗っている。過ぎていくこちらと視線を合わせ、身を立てて直角三角形を描くが、吠えはしない。

2017/6/27, Tue.

白い毛のややふさふさとした犬が、空き地の縁に生えた草をむしゃむしゃやって、紐を持った飼い主を待たせているのを見かける。締まりのない、ユーモラスなような表情。犬とはいつから草食動物になったのか?(去勢の極まり?)

2017/6/25, Sun.

草の多い空き地、小さな子らが男女混じってサッカーを遊ぶなかに、まだ歩くかどうか怪しいくらいの幼児を抱えた男が一人。脇を持って自分の身体の前に浮かせ、来たボールを子の足で受け止めるようにして、遊びに加わらせてやっている。 * 御茶ノ水駅に到着…

2017/6/24, Sat.

ベンチに座っていると、鳩が飛んできて目の前をうろつく。首もとを一周彩る濃い緑(真夏の川のような色? また同時に、どんな記憶に基づいているのか知れないが、どこか「和」の質感を感じさせ、仏教的な印象をも与えるようである)と、足の、実に真新しいよ…

2017/6/23, Fri.

前方から、黒塗りの大きな、ごつごつとした車(鼻面に、GMCとか何とか、アルファベット三文字が入っていた)。脇を過ぎて曲がって行く間際に、ひらいた窓から音楽とともに、煙草と香水の混ざった匂いが届き、鼻を一時占領する。祖父の車のなかの匂いを思い出…

2017/6/22, Thu.

公園から出てきた小学生女子、ランドセルに掛かった蛍光的な黄色のカバーの上、下端まで垂れて流れる黒い髪。 * 裏通り、一軒の窓の外で、茶色の小さな犬が盛り、甲高い声を立てながら跳ね回っている。柵の内を左右に走りながらぴょんぴょんと飛び跳ねる動…

2017/6/21, Wed.

夜道、解体途中の建物。破壊され、瓦礫の敷かれた上にショベルカーが鎮座し、その手前、機械の載った土台の段差に背をつけるようにして、猫がいる。一つの写真を見ているような、実に「画になる」という感覚――巨大な建設機械と、そのバケットのすぐ下に佇む…

2017/6/20, Tue.

民家の小さなテラスの上、まだ赤ん坊と言いたいような幼さの丸々とした幼児が、暑気のなか下着一枚の格好で一人座って、頭を抱えるようにしている。 * 女子小学生二人、塀に棒を差し向けつつ、隙間を覗くようにしている(何か虫か、蝸牛にでも気を引かれた…

2017/6/19, Mon.

裏通り、前を行く高校生のリュックサックが揺れるのに応じて、金具が瞬間、光を反射するのが、カメラのシャッターを切る調子である。また別のものはもっと間を狭く、ほとんど定期的に煌めいて、道の果ての小さな背のなかでその明滅が目を惹いた。 * 駅前、…

2017/6/15, Thu.

裏通り、自転車に乗った少年。妨害者など誰もいないのにベルを繰り返し鳴らしながら走って来る。興が乗ったようでそれが次第に、リズミカルな、調子の良いような符割りになる。過ぎざまに見た顔は、眼鏡を掛けて、さほど陽気そうでもない。 * 高年の女性二…

2017/6/12, Mon.

街道の対岸、走る車の起こした風に半端なように浮かんでは力なく落ちる薄茶色の、かすかな葉の幾枚かに、小さく跳ねて遊ぶ雀の姿を見る。 * 夜道、背後から車の音。過ぎるあいだ、ライトの照射を被せられた足もとの砂地が橙の階調をくぐって行くその推移の…

2017/6/9, Fri.

歩道を歩いていると、すぐ脇をバイクが風を切って抜かして行く。少しうねったような茶髪の後ろ姿が遠くなってから、その女性の纏っていたらしい匂いが鼻に香る。 * 夏服の女子中学生二人。一つの自転車を左右から挟み、それぞれ片手をハンドルの端に、もう…

2017/6/8, Thu.

若い女性、濃い色の茶髪。ゆったりとした白いズボンの余剰部分が脚のあいだに垂れ下がっている(美大生が絵の具でべたべたと汚しながら頓着せずに履く作業着のような連想)。裾から覗く黒く小さな靴、その左だけ、踵部分の縦線がひどく傾いている(靴が壊れ…